歴史的円安と失われた30年に見る上級国民の罪

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こんにちは。
本日は、昨今の「歴史的円安」と「失われた30年」と呼ばれる日本の停滞について、なぜこのような事態に陥っているのか、そのカラクリと仕組んだ上級国民の罪について言及したいと思います。

景気停滞の原因と庶民が貧するカラクリ

まず、「失われた30年」と呼ばれる不況の裏側の構造について、概要からお話します。
1990年初頭のバブル崩壊に伴い、企業の倒産やリストラが相次いだり、非正規雇用が増えて賃金も伸び悩んで長期のデフレ経済に陥って日本経済は全体的に不況で低迷してきたというのが一般的な「失われた30年」のイメージかと思います。

しかし、『本当に全員が貧しくなってきたのか?』というと、答えはノーです。
なぜなら、厚生労働省の「企業における内部留保の推移」を見ても分かるように、企業(特に大企業)の内部留保はこの「失われた30年」の間にも右肩上がりで増え続けており、1人当たりの実質GDPと実質賃金1を比較した際にGDPは伸びているにも関わらず、実質賃金は下がっているからです。
つまり、儲けた分をせしめている存在がいるということですね。

厚生労働省 統計情報・白書 第2-(1)-15図 企業における内部留保の推移より抜粋
厚生労働省 1人当たり実質GDPと実質賃金の推移

後述しますが、これは企業努力の結果以上に大企業を中心とした経団連が政治家とグルで自分たちだけがボロ儲けするための仕組みを作ったことに起因するところが大きいのです。

また、儲かっているのは大企業だけではなく、医療業界にも言えます。
厚生労働省の第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査)によると、勤務医の平均年収は1,467万円もあり、開業医に至っては2,699万円も稼いでいるそうです。
一方、同年の国税庁の民間給与実態統計調査では、日本の給与所得者の平均年収は443万円となっていますから、勤務医でも平均の3.3倍、開業医だと6倍も差がある事になります。

こちらも後述しますが、これだけの格差も偶然の産物ではなく、日本医師会が政治家に根回しして作り上げた儲かる仕組みによるものです。

大企業がボロ儲けするための仕組み

それではまず、如何にして大企業がボロ儲けしているのか、そのカラクリについて説明します。
大きく分けて2つあり、1つは消費税増税による輸出還付金ビジネスで、もう1つは法人税減税です。

  • 消費税増税による輸出還付金ビジネス
    一般庶民の感覚からしたら、『消費税が増えてなんで儲かるの?』と思うでしょう。
    しかし、世の中のズル賢い人たちは一見分かりにくい仕組みを作ることで搾取しているものです。

    具体的には、とある輸出業を営む企業の輸出売上が10兆円で、国内売上が3兆円だった場合、
    輸出売上に関しては消費税が課せられないため、輸出分の消費税は0円となります。
    そして、国内売上については10%消費税がかかるので3,000億円がかかります。
    さらに、仕入れや諸経費が8兆円あった場合、消費税の仕入税額控除額は8,000億円になります。
    最終的に消費税3,000億円から仕入税額控除額8,000億円を差し引くと-5,000億円となるので、この企業は税務署から還付金5,000億円が支払われるということになります。

    ですので、上記の例で言えば消費税が20%の場合は1兆円の還付ということになり、消費税が上がるほど還付金が増えて輸出企業は儲かるわけです。
    だからこそ、経団連は声を大にして逼迫する社会保険料の財源として消費税増税を訴えるんですね。
  • 法人税減税
    日本の法人税はバブル崩壊後、消費税率とは逆行する形で着々と法人税率を下げられています。
    表向きは減税することで設備投資や賃上げに充てられ、景気向上に繋がるだろうという話だったようですが、実際にはそれどころか、バブル崩壊後は多くの企業が人件費のコストカットに躍起になり、この頃から非正規雇用労働者の数は年々増えていっています。

    そして、前述の通り大企業の内部留保が増えるばかりで賃上げには繋がってこなかったのが実情です。
財務省 法人税率の推移
厚生労働省 非正規雇用労働者の推移(年齢別)

このように、経団連は政治家と協力して自分たちだけがボロ儲けできる仕組みを構築してきたわけですね。
もちろん、政治家側にもメリットがなければこうはなりませんので、昨今大きな問題になった「政治資金パーティー券」の購入や「政治献金」によって、経団連を贔屓してくれる政治家にアメを渡しているわけです。

さらに、経団連を率いる大企業は多くのマスメディアにとってCMなどの貴重なスポンサーでもあるので、彼らに都合の悪い情報は忖度して意図的に流さないという訳です。
このため、TVや新聞で言っていることも結局は各々の立場や都合を加味してフィルタリングされた一部の人間に都合のいい情報になるので、何もかも鵜呑みにしてはいけないですね。

日本医師会による社会保険料を吸い取る仕組み

もう1つ大きな問題になるのが日本医師会による社会保険料の搾取問題です。
少子高齢化の進行に伴い、病院を利用する高齢者の割合が増え莫大な医療費が財政を圧迫していることが問題になっていますが、この裏には見過ごしてはいけない問題があります。

それは、病院側が莫大な利益を出しており、しかもその原資は保険料だと言うことです。
病院の利用者、特に入院患者は「年齢階級別にみた施設の種類別推計患者数」の表を見て分かるように後期高齢者が圧倒的に多数を占めています。
そして、後期高齢者の医療費の自己負担割合は現役世代並みの所得がある人で3割、一定所得がある人で2割、それ以外は1割となっています。
自己負担割合は、単身であれば以下の表の通りとなっており、厚生年金受給世帯の平均受給額が約14.4万円(年収172.8万円)となっていることから、平均的な世帯は1割負担ということになり、ほとんどの入院患者の医療費の9割は現役世代の納めた保険料で成り立っているということです。
言い換えれば、病院が保険料で運営されていると言っても過言ではないでしょう。

年金収入+その他の合計所得金額自己負担割合
200万円未満1割
200万円以上383万円未満2割
383万円以上3割
厚生労働省 年齢階級別にみた施設の種類別推計患者数

もちろん、高齢者が増えたから全体の医療費が増えて、社会保険料が上がること自体は仕方がないという側面はあると思います。
ただ、ここで問題なのは、病院側が利益を上げるために過剰な延命治療で搾取したり、政治家に圧力をかけて補助金を出させたり、自分たちに都合の悪い法改正を阻止して既得権益を貪っていることです。

詳しくは近藤誠氏の著書「最高の死に方」や、和田秀樹氏の著書「どうせ死ぬんだから」を読んで頂きたいですが、ここでは延命治療に関する一例を紹介します。

数年前、介護現場で働くナースたちにむけて講演したとき、ぼくはこう質問しました。
「もし立場が逆だったら、あなたがたが毎日行っている胃ろうなどの食事介助を、ご自分も同じように受けたいですか?受けたい人は手を挙げてください」
100人以上いたナースのうち、「受けたい」に手を挙げた人はゼロでした。

つまり、介護現場で働くナースなどのスタッフは、「自分はこんなことされたくない」と思いながら、胃ろうなどの食事介助にイヤイヤ協力させられているわけです。

最高の死に方 (宝島社新書) 近藤誠(著)

栄養補給をしないと、患者さんは2週間程度で亡くなる。
それでは病院やクリニックがつぶれてしまう。
なんとしてでも長生きしてもらわねば。これが、”延命至上医師”たちの本音でしょう。

最高の死に方 (宝島社新書) 近藤誠(著)

また、補助金の観点ですと、コロナ禍では「病床確保料」として多額の補助金が出ており、2020~2021年度だけで全国の3477の医療機関に計3兆1029億円が支払われています。
これにより、一部医療機関では平均収支額が数億円の赤字から数億円の黒字になっていたという報告が会計検査院から上がっており、5類移行後も「病床確保料」を継続するように日本医師会は声明を出して圧力をかけています。

国民には延命と称して長期入院させて莫大な医療費で儲けて保険料を吸い取り、政治家に対しては圧力をかけて補助金という名の税金を吸い取るというやりたい放題な訳です。
多くの諸外国では病院は国営機関ですし、アメリカでは国民皆保険がなく保険料は民間の保険会社が支払うため審査が非常に厳しいので、ここまで悪徳商売のようなことをしているのはおそらく日本だけでしょう。

「アベノミクス」でさらに苦しくなった庶民の暮らし

「アベノミクス」は円高の是正と株価の上昇という観点ではメリットもあったのかもしれませんが、大規模金融緩和で大量に円をばら撒いたことで、現在の円安の一因になったと同時に、日銀が国債を抱えすぎて利上げすると債務超過に陥ってしまったという問題があります。

特に、円安が進んだことで昨今のロシア・ウクライナ戦争に起因する世界的な物価高と相まって、様々な資源を輸入に頼っている日本では物価高と円安のダブルパンチで生活をかなり圧迫しています。
また、庶民は株式をほとんど保有していませんから、株価が上がっても暮らしに影響は無いんですよね。

金融緩和や法人税減税は『トリクルダウン2を狙ったものではないか』という説もあったようですが、故安倍首相は当時、その説については否定しているのでデフレ脱却を目論んで行ったものだろうと言われていますね。
しかし、トリクルダウンを狙った訳ではないとしても、やっていることはそれそのものなので、トマ・ピケティが「世界不平等レポート2022」でトリクルダウンを否定したように、政策としては失敗だったんだと思います。

市場にお金が出回っていない事によるデフレを脱却したいのであれば、大量に紙幣を刷ってインフレを起こすような真似をしなくとも、上記のように内部留保を溜め込んでいるところから賃金に還元するなどの形で吐き出させて、消費者が安心して消費できるような政治を目指すべきだったのでは?と思います。
もっともそれをやると経団連から刺されてしまうから金融緩和を選択したんでしょうし、これは推測の域は出ませんが、そもそも円高だと輸出で儲けられないから過度の円安にするために経団連から圧力をかけられたのが発端ではないかと邪推してしまいますね。

たしかに輸出企業が儲かれば税収は増えますが、上述の輸出還付金の話があるように庶民に最適に再分配されるわけではありませんし、それよりも物価高が進む方が遥かに実質賃金の低下を招いて暮らしが苦しくなってしまいます。
そして、短期で見れば輸出で儲かっていても、長期的に見れば人口の大多数を占める庶民の暮らしが苦しくなれば消費もどんどん冷え込んで大企業にもツケは回ってくるはずです。
この悪循環を断ち切るためには、政府は経団連の顔色を窺って庶民の首を絞めるのではなく、「庶民が生活水準の向上を体感できるレベルの賃上げをしなければ法人税を上げるぞ」と闘うくらいの姿勢を見せて欲しいものですね。

さらなる増税で庶民の不安増と困窮を目指す?

厚生労働省の毎月勤労統計調査 令和6年3月分結果速報を見ると、実質賃金が前年比2.5%減となっています。
さらに、令和5年も前年比2.5%減、令和4年も前年比1.0%減となっていることから、連続して実質賃金が低下し続けていることがわかります。

名目賃金は賃上げによって(個人差はあれど)僅かに上がっている訳ですが、実質賃金が下がっているということは生活は苦しくなっているということです。
にも関わらず、昨年2023年にはインボイス制度が始まって事実上の小規模事業者への増税を行い、少子化対策の財源として社会保険料の負担増が検討されたり、退職金課税見直しの話や金融所得に対して保険料負担を検討するという話が出てきたり、如何にして奪りやすいところから搾り取るかという話ばかりが出てくるので、岸田首相は一部では増税メガネなどと揶揄されていますよね。

政府の役割は富の再分配のはずなのに、大金持ちは減税して庶民から搾り取るという真逆のことをやっている訳ですから、おかしな話だと思います。
ただでさえ実質賃金低下で生活が貧しくなって、年金問題で将来の不安が肥大化している状態で、『少子化対策のために増税します』と言われて安心して暮らせる人はいないでしょう。

事実、2019年の全国家計簿構造調査によると、個人金融資産2,023兆円のうち、およそ1,274兆円もの資産を60歳以上の高齢者が保有しており、若者や子育て世代にはお金がなく、高齢者もあと何年生きることになるか、どれだけお金がかかるか不安でお金を使わずに貯め込み続けているという状況です。

裕福な家柄に生まれて盤石な人生を歩んできた上級国民には、庶民の心理なんて到底理解できるものではないのかもしれません。

また、アベノミクスを実行した故安倍元首相はかつて自民党総裁選で「美しい国、日本」というスローガンを掲げていましたが、ごく一部の上級国民が一般庶民の極貧の上に私腹を肥やす今の社会を美しい国だと考えていたのだとしたら、美的センスが難解すぎて私では理解が出来ないですね。

もし日本が1つの企業だとしたら、これほど公平感がなく、将来不安が強く、社長や役員に相当する政治家や官僚にも不信感しかない状態では離職者が後を立たないでしょう。
ただ、大半が保守的で外国語にも疎い日本人は離職(渡航)することもできず、圧倒的に低いES(満足度・幸福度)の中で生きており、人によっては最後の手段として自殺によって離職するという、、まさにブラック企業そのものだと思います。

上級国民がやりたい放題の国、日本

下表は「国政選挙(衆院議員総選挙)における年代別投票率の推移」と「統一地方選挙の投票率推移」のグラフなのですが、この2つのグラフから下記3つのことがわかります。

  • 投票率は年々下がっている
  • 若年層ほど投票率が低い
  • 地方選挙は尚のこと投票率が低い

これらのことはもっと大きく取り扱うべきことだと私は考えています。
なぜなら、為政者が国を統治するに当たり、好き勝手に統治するために最も重要なのは反逆の芽を摘むことであり、そのために最も簡単な方法は、穿った表現かもしれませんが国民を反逆する気すら起きない無知な歯車に仕立て上げることだからです。
知識を持たせてしまえば、様々な政策に対して”なぜこんな政策になっているのか?”と疑問を持ったり、不平等な仕組みに気付いて反旗を翻す人間も出てくるでしょう。
ところが、為政者が何をやっているのかすら知らない状況であれば、”最近、物価が上がって生活が苦しくなったな”、”税金が増えて生きづらくなったな”と思っても、何をどう変えればいいのか、誰に言えばいいのかが分からず、漠然とした不安や不満を抱えていても日常生活に追われる中で流れてしまい、変革するために行動を起こすとことは余程追い詰められない限りまず無いという訳です。

個人的には、こうした背景から学校教育では政治や歴史、社会の仕組みについては深く教えずに全く実用性のない暗記教育ばかりを推奨しているのではないかと勘繰ってしまいます。

近年の国政選挙では全体平均だと大体50%程度の投票率しかなく、地方選挙だと50%を割り込んでいるので、国民の半分は政治に興味がなく、無知で反旗を翻すことのない歯車のようなものという事になります。
リニア中央新幹線の静岡工区の問題で大きな話題になった先日の静岡県知事選ですら、投票率はわずか52.47%という結果でした。
そして、投票している中で見ると40代以上がほとんどを占め、その中でも高齢者が過半数を占めるのですから、国をより良くすることではなく選挙が仕事だと勘違いしてる政治家からしたら、そういう人たちの方だけ向いてケアしていれば安泰な訳です。

投票率が下がるほど、限られた人たちの偏った意見だけで物事が決められるようになり、どんどん民主主義から遠ざかっていきます。
もし今の若年層がこのまま政治に無関心で投票に行かないとしたら、将来的には全体の投票率は3割〜4割程度になってしまい、そうなると政治家としては『どうせ国民のほとんどは政治に興味がなくて、事を荒立てられることも無いだろうから、自分たちに都合のいいように好き勝手にやろう』などと言い出して、泥舟まっしぐらでしょう。
また、民主主義というのは有権者のレベルで結果が大きく左右される事を考えても、政治や社会に無関心な人が増えることは日本という国の大きなリスクだと思います。

(補足)アベノミクスや昨今の政府の増税スタンスを否定していますが、これは野党を擁護するものではありません。問題を放置してきた罪は野党も同罪ですし、内閣支持率も自民党の政党支持率も3割未満の状況で支持率を獲得できない体たらくは、言い換えれば国民から選択の余地を奪っている訳で、それでは政治家としての仕事を全う出来ていないと言っても過言ではないでしょう。

総務省 衆議院議員総選挙における年代別投票率の推移
公益財団法人 明るい選挙推進協会 統一地方選挙の投票率推移

まとめ

『お金は経済の血液』なんて言われたりしますが、人間であれば血液が滞れば病気になったり問題が起きるように、お金も循環しないと経済に問題を来すのです。
ものすごく簡単に言えば、お金が円滑に回れば好景気で、お金が滞れば不景気になる訳です。

私も経営者の端くれなので、資本主義を否定する気はないですし、真っ当に努力した結果の資本家であれば何も問題はないと思います。
ところが、上述のように一部の人間が長期間に渡って経済循環を邪魔してピンハネした血税で私腹を肥やしており、それによって一部の場所に数百兆円ものお金が滞ってしまい、市場にお金が活発に出回らず、多くの人々が生活に困窮し、将来を危惧してさらに貯蓄に走るので経済が滞るという失敗社会が出来上がっている訳です。
まさに国民の栄養を吸い出して肥大化する癌細胞ですね。

残念ながら、現状、私腹を肥やしているのはルールを決める側の政治家であったり、その政治家に対する影響力を持つ経団連や日本医師会など一部の上級国民のため、彼らが自ら既得権益を手放して改正するというのは考えづらい(そもそもそんな良識があればこんな事にはなっていない)ため、庶民にできることは選挙に行って少しでもまともな候補者を選ぶことや、政権交代を機に古い既得権益システムが御破算になるのを願うことくらいだと思います。

あとは、こうやって問題を言葉にして微力ながら声を上げていくことでしょうか。
戦後の日本は実質的な世襲政治など民主主義的ではない側面はありますが、一応、法律上は民主主義国家なので、多くの人が声を上げて民意が大きくなれば政治や世の中も変わっていくと私は思います。

脚注

  1. 実質賃金とは、労働者が受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いて算出した指数のこと ↩︎
  2. トリクルダウンとは、大企業や富裕層を先行して豊かにすれば、中小企業や低所得層にも富が波及し、国民全体が豊かになるという経済理論 ↩︎

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