出産に伴う支援金格差から見る少子化対策の改善点

社会問題

こんにちは。
本日は出産に伴って支給される支援金の支給条件の違いから見る少子化対策の改善点について書きたいと思います。

雇用保険に入っていないと支給されない支援金

まず、雇用保険に入っている労働者(いわゆる会社員)しか受け取れない支援金のお話です。
出産育児一時金は雇用保険加入の有無に関わらず、一律で1児につき50万円が支給されます。
しかし、出産手当金、育児休業給付金については、雇用保険に入っていないと支給されません。

出産手当金とは産前6週間・産後8週間の産休期間に支給される給付金のことで、育児休業給付金は原則1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得している従業員に対して支給される給付金のことです。
出産手当金、育児休業給付金のそれぞれの支給額は以下になります。

出産手当金過去12ヵ月の給料(標準報酬月額)を基準とした日給の2/3に相当する額
育児休業給付金育児休業開始から180日目までは休業開始前の賃金の67%を支給
181日目からは、従来通り休業開始前の賃金の50%を支給

これにより、いくらぐらいの支援金の差が出るかと言えば、
標準報酬月額が30万円で比較した場合、出産手当金が65万3,366円、育児休業給付金が181万1,000円となります。

さらに、雇用保険加入者は健康保険料も免除されるので実質50~60万円ほど有利になります。
つまり、同じように健康保険料を支払っている(なんなら会社と折半でない分、雇用保険非加入者の方が支出割合は高い)にも関わらず、雇用保険加入者は300万円も有利になっている訳です。
当然ながら基準となる給与が上がるほどこの格差は拡がるため、非常に不平等な制度となっているのです。
令和6年1月から産前産後4ヶ月の国民健康保険料も免除となりました。

ちなみに、公務員の場合はどうかと言えば、公務員は産休中も給与および賞与が満額支給されるため、そもそも給与が支援金が必要ありませんし、出産手当金も育児休業給付金も給与支払いが通常通りある場合は支給条件の対象外となっています。
さらに、共済掛金(保険料)も産休中は免除になります。

支援金はどこから出ているか

雇用保険加入者と非加入者で大きな格差がある出産手当金と育児休業給付金ですが、お金の出所はどこなのでしょうか?

結論としては、いずれも国庫から支払われています。
つまり、雇用している事業主が負担する訳ではありません。
事業主が負担しているのであれば、雇用保険の加入有無で支援金に差があるのも納得できますが、国庫から出ているとなるとおかしな話ですよね。

それに、雇用保険加入者しか支給されないということは専業主婦やパート勤務の方は支給されないということになります。
もちろん、配偶者が高所得者だから専業主婦やパート勤務をしている方もいるでしょうが、所得分布から見ればそういう人は少数派でしょうし、雇用者の4割が非正規雇用で内半数以上を女性が占める状況で、雇用保険非加入者に支援金を支給していないというのは、少子化を後押ししている大きな要因ではないでしょうか。

なぜ支援金の支給有無があるのか

雇用保険加入者の場合は、健康保険組合と全国健康保険協会が運営する「健康保険」に加入しています。
一方で、自営業者(農業、漁業従事者含む)やパート、アルバイトで雇用保険非加入者の場合は、都道府県が運営する「国民健康保険」に加入しています。

つまり、運営母体が異なっているのです。
そして、健康保険組合に関する法律である「健康保険法」では出産手当金の給付義務があるのですが、「国民健康保険法」では、出産手当金の給付は任意となっているため、どこの自治体も支給しないという訳です。

この違いは、そもそもの運営母体の成り立ちの違いといった歴史的背景からきている訳ですが、理由はどうであれ少子化対策の重要性が叫ばれる現代社会において、産休・育休時に支援格差があるというのは旧時代的で大きな社会問題だと思います。

最後に

出産手当金と育児休業給付金の雇用保険加入有無の違いによる支給格差という観点でお話ししてきました。
しかし、他にも出産費用が保険適用外のために病院の値上げに伴って自費による出費額が年々大きくなっている問題や、出産以前に20代・30代の未婚率が上がっている問題もあります。

少子化という1つの社会問題に対して、解決すべき課題が山積している状況ではありますが、1つ1つ問題を解決できるように法整備されることを切に願っています。

それでは本日はこの辺りで失礼します。

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